ピラニアの輪郭が、はっきりと見えてきた。


鋭い牙が、私の方に向いている…。


ヤバい！


かじられてしまう！


私は、おののき、イカダの上に、乗ろうとする。


しかし…、


ザァァァ！


波でイカダが傾き、うまくいかない。


くっ！


上がれ、私の体よ！


私は上がろうと、必死でもがく。


しかし、アマゾン川の急流は、それを許してくれなかった。


…いかん。


ピラニアが、凄い勢いで、上がってきている！


駄目だ！


もう間に合わない！


餌食になるぞ！


私は、ピラニアにかまれることを覚悟し、目をつぶった。


シャァァァ！


うわぁぁぁ！


痛みが…！


…。


…やってこない？


ピラニアは確かに足元まで迫っていた。


それなのに、なぜ？


私は、目を開け、下を見た。


ガチ、ガチ。


ピラニアが、確かに近くにいた。


大きく口を開けていた。


しかし、いる場所は、半透明の物を隔てた先だった。


私の足元に、薄い何かが出現し、ピラニアから守ってくれたようだ。


これは一体？


私は辺りを見回す。


正体はすぐに分かった。


粒子のイカダだ。


その端が水中に曲がり、私の足元へと伸びていたのだ。


グゥゥゥン。


それが突然、上がり始める。


ザパァァァン。


数秒後に川を脱した。


おお…！


助かった！


無事、イカダの上へと戻れたぞ！