「なっ。


レアコアの欠片が…？」


シルの言葉に、私は驚き、声をもらす。


そして、慌てて潜水艇の後方を見た。


私の目に見える範囲に…、まだ姿はない。


潜水艇の光が届かない、暗闇の先にいる…のか。


私の背中を冷や汗が流れる。


まさか、このタイミングで欠片が来るとは…。


洞窟内を進んでいる、この時に。


ヤバいタイミングで来てしまったと感じる…ぞ。


潜水艇に乗っている時なのだ。


水面の3m下にいる時なのだ。


強く攻撃され、潜水艇に穴が開いたら、激流に飲み込まれてしまう…のだ。


一体、どんな欠片が来るのだろうか。


強い攻撃力を持った相手でなければ良いが。


…！


はるか後方で、何かが潜水艇の光を反射して、銀色にきらめいた。


上下左右に小刻みに揺れながら、


こちらに向かってきている。


凄まじい、速度だ。


グングンと潜水艇との距離が縮まっていくぞ！


もう数百mの距離だ。


近付き、形がはっきりしてきた。


どこかで見たことがある姿をしている…。


田んぼや池で、見たことがある姿だ。


分かった…ぞ。


ゲンゴロウだ。


大きさ数cmの、泳ぎの得意な昆虫。


小学生の時に、教室で、飼育係が世話をしていて、


その泳ぎを見たことがある。


水槽内を、華麗にターンしていた。


素早く潜水と浮上をしていた。


その時、私は、なんと泳ぎのカッコイイ生き物だと思ったものだ。


そんなゲンゴロウの姿をした、大きさ2mぐらいのレアコアの欠片…だ。


とんでもなく泳ぎが、ヤバそうだ…ぞ。