ザザァァァー。


アンデス山脈に向け、アマゾン川を粒子のイカダが上っていく。


ドームの中から、外を眺めていると、


ザァ！


突然、イカダが急停止をした。


イカダはかなり速い速度で航行していた―


あぐらをかいて座っていた私は、前へ体勢を崩し、


床に両手をついた。


その姿勢のまま、体が前へすべり、壁にぶつかって止まる。


私はぶつけた右腕をさすりながら、何が起こったのかと、周囲を見回す。


イカダが急に止まるなんて、尋常ではない。


敵襲か。


「すまない、コウ。


イカダを停止させた。


衝突回避のため」


シルが申し訳なさそうに私に言った。


「衝突回避…。


イカダの進路に…何かが？」


私はイカダ前方をにらんだ。


確かに、何かが…いる。


水面から、顔を出している。


あの…生き物は！

カピバラさん きらりんジュエリ~ンぬいぐるみ B.ホワイトさん

カピバラだ！


カピバラ…。


アマゾン川流域を中心として生息している、


草食の、おとなしい動物だ。


水面近くにいることに気付き、シルがイカダを止めてくれたようだ。


「感謝するぞ、シル。


衝突していたら、凄い衝撃になっていた。


私は激しく壁に叩きつけられていただろう。


カピバラもかなり痛い目にあっていた。


しっかりと集中した航行、ありがたい」


私はシルに言った。


シルは少し照れくさそうにうなずくと、体を光らせ、


ザザァァァー。


再びイカダを上流へと航行させるのだった。