朝食が食べ終わった。


私は座った状態のまま、体を少し後ろに倒し、お腹を楽にさせた。


横を見ると、シルが変わらず、体を薄く光らせ、粒子のイカダを操作していた。


大変ではないと昨日言っていたが、ずっとイカダに意識を向けていなければならないのだ。


大変そうだ。


逆に私は、イカダに乗っているだけで、何もしなくて良い。


アンデス山脈の近くに到着するまで、運んでもらえる。


悪いと感じるとともに、とてつもなくありがたいぞ。


…そうだ。


シルには、それ以外にも感謝すべきことがあった―。


「コウ。


おはよう」


私の視線に気付いたのだろう、シルが私の方を向き、挨拶をした。


「おはよう、シル。


イカダの航行、御苦労」


私はシルに言葉を返す。


「過負荷、なし」


その私の言葉に、シルはそう返答する。


「シル。


私は、感謝したいことがあるぞ。


墜落から救ってくれたことだ。


昨夜、夢を見て、思い出したのだ。


私がパラグライダーでの飛行で失敗し、墜落した時、


落下速度を上昇気流を起こし、緩和してくれた。


それをしてくれたのは、シルなのだろう？


それがなかったら、私は、今ここに、こうしていないだろう。


私を遭難から救ってくれただけではなかったのだな。


感謝する」


私は、礼を言った。


その私の言葉に、シルは無言でうなずいた。


そして、良かったと言わんばかりに、


優しく、体を輝かせた。