アマゾンでの昼食が終わった。


「クー、ありがとう！」


私は食事を出してくれた犬型食糧配給システムのクーにお礼を言った。


「くぅ～ん」


クーが満足げな声をあげた。


鳴き終わった後、彼のホログラフィが揺らぎ始める。


「クーが意思石へ戻る準備を始めている」


ヴゥ……ン。


「くぅん…」


そう鳴くと、ゆっくりと、静かに、その姿が消えていった。


「意思石へ戻った」


不思議だ。


私はジャケットの内ポケットにある意思石を取り出した。


青く光る楕円型の石を眺めた。


綺麗な石だ。


「この中にクーが入っているなんて信じられない。


どうなっているんだ…」


「古代人は疑似意思を作り出し、物に宿す技術を発明した」


「疑似意思…？」


「人工的に作り出した心。


意思石は、その心を入れる器」


「心を入れることが出来る石…か。


この中に、シルやクーの心が…。


お、落としたりしたら大変だぞ！」


私は意思石をジャケットの内ポケットの奥深くに丁重にしまった。


「意思石は回路の集合。


それを守るため、ブラックホール技術により、強化している。


簡単には、破壊不可能」


「意思石は回路の集合…。


心を入れられるよう、複雑な構造をしているのか…。


ブラックホール技術？


なんだろうか、それは？」


「超重力により、素材を圧着。


強固にする」


ブラックホール技術…。


古代人は凄いものを作ったものだ。


「かなり丈夫そうだ。


それだけ固いのなら、レアコアの攻撃にも…」


「無理。


レアコアもまた、古代人が作り出したもの。


攻撃力甚大。


今は、まだ完全に封印が解けていないため、大丈夫。


しかし、完全な状態なら、持たない」


「レ…レアコアの攻撃を受けないよう、気を付ける…」


「お願いする」


意思石。


それを守ること。


それが私の責務だと感じた。