ビュゥゥゥー。


私は、上空をパラグライダーで飛んでいた。


良い景色だ。


森、山、川、そして、海―


アマゾンの広大な自然が、私の視界を流れていく。


ボォォォ…。


今日は、


風が…良い。


翼が、しなっている。


いつもより…速度が出ているようだ。


上昇気流もあり、高い高度で飛行出来ている。


おお…。


心地良い…。


まるで、鳥になったようだ。


自由に、はばたくのだ。


私よ。


私は気分を高揚させた。


ビュン、ビュン！


その時だ。


風がうなりをあげた。


…ん？


風の様子がおかしいように思える。


気流が、乱れている…のか？


私は、周囲を見渡した。


右前方に、


厚い雲のかたまりが見えた。


あれは、


積乱雲…。


悪天候をもたらす、危険な雲だ。


雷雨、突風を発生させる。


今日は、天気が崩れる日だったか…。


朝起きた時は、青天であったので、大丈夫だと思っていた。


ちゃんと天気予報を確認していなかった…ぞ。


天気が荒れる前に、地上へ戻った方が良さそうだ。


私は着陸ポイントへ向かうため、パラグライダーを旋回させた。


その時―


ビュゥゥゥン、ビュゥゥゥン！


先程よりも強い風が私を襲った。


これは…！


ヤバいレベルだぞ！


ボォ、ボォォォ！


翼が、大きく揺れている！


上下に、激しく気流が発生しているようだ！


ひもが…たるむ。


いかん！


体に、からまった！


…くっ！


ほどけない！


墜落するぞぉぉぉ！


うわぁぁぁ！


私の体が落下を始めた。


凄い勢いで地面が近付いてくる―


「うわぁぁぁ」


私は毛布をつかみ、体を起こした。


…？


ここは…上空…ではない…。


休憩ドームの…中だ。


夢だった…か。


…。


シルと出会う前、


私は、パラグライダーで飛行を失敗し、墜落した。


その時の…記憶だ。


よく助かったものだと感じる。


かなり高い所を飛行していたのだ。


落下速度は、尋常ではないだろう。


普通は、助からないように思える。


…。


…よくよく考えてみると、


もしかしたら、


シルが助けてくれたのかもしれない。


落下時、意識が途絶える寸前、地上から、強い上昇気流が起こったように思える。


それは、普通の風とは違う、圧力があった…。


シルが空気中の粒子を操作し、落下速度を緩和してくれたのだ。


シルは、私を遭難から助けてくれただけではなく、墜落からも助けてくれていたのだ。


…感謝する…ぞ。


シル。