「潜水艇、行く」


シルの声とともに、


ザ…ザザ、ザァァァー。


潜水艇が動き出した。


ゴォォォ…！


アマゾン川の激しい流れを受けながら、


洞窟の入口へと向かっていく。


凄い…迫力だ…ぞ。


私は、ブルブルと、体を震わせた。


先程、私は、安心して乗っていられる、とシルに言ってしまったが…、


この激流を、正面から受けて移動しているのだ。


水面の3m下で、周りは厚さ数cmの壁があるのみ…。


洞窟の天井には、ぶつからないかもしれないが、


この壁に穴が開いたら、川の水が、凄まじく、私に押し寄せてくるのだ。


それを考えると、落ち着かない…ぞ。


大丈夫なのだろうか。


私は這って前へ移動し、壁に右手をふれた。


シルが周囲の粒子を集めて構築してくれた、この壁は…、


弾力があり、丈夫そうだ。


ちょっとやそっとのことでは、びくともしなそうに思える。


現に、真正面から、凄い水圧を受けているはずなのに、


全然、きしんでいない。


大丈夫な感じだ。


泰然と構えていれば、良いぞ。


私がそう思った時だ。


視界の先、


にごった川の水の中に、細長く、大きい、何かが見えた。


すごい勢いで、こちらに近付いてきている。


あれは…、


何だろうか？


私はじっと見つめた。


徐々に形が、はっきりとしてくる。


…分かったぞ。


あれは、木の枝だ！


太くて大きい。


5mを優に超えている！


ヤバい、このままだと、


この潜水艇にぶつかるぞ！