イカダは岸から離れると、どんどん加速していった。


「おお…！


確かにイカダが、上流に向かって上っているぞ！」


私は、川の流れに負けず、上っていくイカダに驚きの声を上げた。


急流であるのに、良い速度が出ている。


時速50kmを優に越えているだろう。


「嬉しいぞ、シル。


これならば、アンデス山脈に到着するのも遠い未来ではない。


しかし、不思議だ。


なぜ、このイカダは、川をさかのぼることが出来るのだろうか？」


私は、首をかしげ、シルに聞いた。


「川の構成物質、操作している。


イカダの下で、回転させている。


そのため、上る」


シルが答えた。


「イカダの下だけ川を逆流させている…のだな。


どのように動いているのだろうか…」


私は、イカダの端まで近付き、下を見た。


…！


確かに、イカダ周辺の水面が逆向きに動いているぞ。


イカダの後ろの水面下から湧きあがって、前へ流れ、前方で潜り込んでいる。


戦車のキャタピラのような動きをしているようだ。


川の流れが速くても上れるのは、そのためか。


「凄いぞ…」


私の口から感嘆の声が漏れた。